愉快なケミストーリー

東京都足立区キリスト教の教会Sail of the Lord Church(セイルオブザロードチャーチ)の化学者Sによるブログ(ケミストーリー)です。

Favipiravir(アビガン)の特許を一緒に読んでみませんか。

今日は新型コロナの治療薬

の一つとして期待される

Favipiravir(商品名アビガン®)について、

ググってもあまり見つからない

「Favipiravirの開発ストーリー」に関して

をお伝えします。

 

ちなみに、なぜコロナに効くのか?などは

百科事典Wに載っています笑

 

特許文献(1)は、こちらからみられます。

医薬品の特許文献は数百ページもザラですが、

Favipiravir(アビガン)の特許は

わずか20ページです。

ぜひ一度手に取って読んでみてください。

 

専門知識なくてもある程度分かります!

TOEFLやIELTSの練習にもなるかも笑

 

 

■まず1ページ目には

どこの国に特許を申請したか、

や発明者や弁理士の名前などが書いてあります。

 

 

■2ページ目上半分のBACKGROUND ART(背景技術)

抗ウイルス薬の重要性、

例えばインフルエンザの予防薬や治療薬

の重要性が書いてあります【0002-0005】。

これを踏まえて本発明は、

インフルエンザウイルスに対する予防や

治療効果がありますよと書いてあります。【0006】

 

そうです、御存知の方もいるかもしれませんが、

Favipiravir(アビガン)はもともと

抗インフルエンザ薬として開発されたのです!

 

 

 

2ページ目下半分(DISCLOSURE OF THE INVENTION)

からはひたすら発明の説明が書いてあります。

薬としての効果(薬効)がほぼないものも含めて、

その全てを一般化したものが

【0007】に書かれています。 

 

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一般構造(赤い部分をさらに最適化していく)

 

■5~8ページには

その具体例が合計156種類のっていますね。【0016】

65番目がFavipiravir(アビガン)ですね★

 

■ページ11~12では

つくった化合物の薬効を実験で調べていますね。

例えば、よく似ている構造の154番と比べると、

Favipiravir(アビガン)は1/100の量で5倍の薬効、

単純計算で500倍違うということです。

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たとえ化合物の構造は似ていても、

薬としての効果は全然違う

ことがあるというのが良く分かります。

 

今回特許に載っていたのは156種類でしたが、

これはごくほんの一部でしょう。

そもそもアビガンは、他の医薬品と比べても

極めて単純な構造をしています。

 

 

医薬品開発は本当に大変です。

「3万分の一の世界」とも言われ、

すさまじい数のトライ&エラーがあります。

一生のうちに一度も

日の目を見ない研究者もいます。

 

 構造が似ていても薬効は全然違う、

というのが当たり前の世界なので、

手当たり次第全て、漏れなく調べます

 

最近はAIやハイスループット(自動化)

のおかげもあり、かなり負担は

減ったと思いますが、それでも

近年の偉大な医薬品の中には、

数億、数兆種類調べてから見つかった

ものもあります。

 

偉大な研究成果は、

あれこれ理由を付けず無条件やって、

すさまじい失敗を乗り越えて得られる

のだなぁと改めて感じました。

 

最後までよんでくださり、

ありがとうございました。

 

 

ケミストS

 

参考文献

(1) Furuta Y, Takahashi K. Nitrogenous heterocyclic carboxamide derivatives or salts thereof and antiviral agents containing both. WO 00/10569[P]. 2001-04-07.